四国出張を活かして、週末レース。なんとこれが今シーズンの初レースでもある。完成したばかりのStandert ERDGESCHOSSを提げて、愛媛から徳島へと西進。
地方のシクロクロスが面白そう、とは常々思っていて、旅として週末を転戦していくのはなかなかいいアイデアではないか。前日は兼ねてから気になっていた「大歩危・小歩危」を訪れ、この地の妖怪伝説に触れた。人里離れた真冬の寒村で人生を思うのは悪くない心地にさせる。
この時期に珍しく、雨がちな一週間だったレースウィーク。三好市のレース会場に7時過ぎに入ると、会場は泥祭りの様相を呈す。家から気軽に来れるレースならまだしも、レンタカー、そしてこの夜には飛行機輪行で帰ることを考えるとなかなかに気が重くなるマッドコンディション。幸い気温は低くなく、雨は上がっている。
河川敷に置かれたフラットなコースは、参加者の人数や会場の牧歌的な雰囲気を含めて信州クロスのいくつかのレースを思い起こさせる。ローカルなレースに、自分が現代の旅芸人になった気がする。喜び勇んで泥に入り自転車を担ごうというのだから相応に芸の人であると言っても言い過ぎであるまい。それもほとんど異国の地のような、遠く離れた四国で。
とはいえ、それなりにシクロクロスをやっていると各地に知り合いはできるもので、それがまた旅をして見知らぬ地を走ってもいいと思える理由でもあるのだった。
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C1のレースは午後イチ。朝の試走を1周、昼の試走を1周してレースへ。ミニマム装備の出張参戦だと、試走でいろいろ汚すのも気がひける。ローラーなんてもちろんないけれど、まぁアップが云々、と文句ごちるより、楽しく走れればいいやと切り替える。なんといっても、2018年12月以来のレース。もう1年も走ってないのだから、まずはレースを楽しんで走ることから。
スタートは2列目。参加者全体でも2列。このあたりも信州クロスっぽくていい。スタートして5番手くらいで第1コーナーへ。その後は3名が少し先行し、後ろの4名ほどのパックに入る。先頭3名にはコッシーがいる。できればここに追いついておきたいが、4名パックも適度に足が揃っていて、じわじわと3名との差が開いていく。
コース前半分は泥も重くなく、見た目ほどには走りづらくない。後半は深い水たまり、そして泥もまとわりつく系で重く、まぁ軽量級の自分には苦手なパート。腰が死ぬやつね……。
初めてDi2を実戦投入してみて、まだ感覚とギアがあっておらず、シフトミスを多発。重くしようとして軽くなるのはまだいいけれど、軽くしようとして重くなるのはなんともシンドイ。長指グローブで小ボタンを押すのもレース強度の余裕のなさでは難しく、これは左ギアダウン、右ギアアップのように左右にシフトを割り振った方が直感的かもしれない。
レース前半は4名のパックで先頭を入れ替えながら進んでいく。この前後に選手がいて、みんなで前を追っていく感覚はたまらない。シクロクロスしてるぜ! って感じる瞬間。ペースの合うパックで走っていると集中力が高まっていき、ラインどり、ペダリング、上半身の動かし方、などなど走りながら要素を細分化して客観的に見ている自分がいることに気づく。周回を重ねながら、前の周ではイマイチだったところを改善していく。こういう走りながら研ぎ澄ましていく感覚は、レースならでは。楽しい。
バイクの走らせ方もわかってきた4周目、水たまりの中で何かを踏んづけたらしく、後輪がパンク。oh no. 半周をベコベコ言わせながらピットへ行くも、とうぜんスペアバイクもホイールもなく途方に暮れかけているとシオカゼストアの古川さんが救いの手を差し伸べてくれる。スタッフのユウスケさんのバイクを貸してくれるという。こんな泥のレースで申し訳気持ちになりつつ、お言葉に甘える。同時出走のC2では同じくシオカゼのゴリさんが好走しているという大事な瞬間だったにも関わらず、バイクを貸してくれたみなさんに感謝。
残り2周半は耐える。落とした順位をひとつでも拾う我慢の走り。ペダルがはまらないので重馬場のマッドセクションは辛いものの、Cieloのハンドリングの軽快さにも助けられて、粘って走ってフィニッシュ。7着。優勝は4周目突入時に同じパックだった選手だったということで、チャンスがなかったわけでもないが、シクロクロスはやはりちゃんと準備し、レースを走る心構えがなければ弾き返されてしまう。1年以上ぶりのレース、トラブルも含めて楽しめたということがまずは何よりの収穫。
遠い阿波国でのレースでも、シオカゼのみなさん始めコース脇からの応援をいただき、これがまた嬉しいもんだと久々に思い出しもしたのだった。やっぱりシクロクロスっていいね、とシーズン終盤にシーズンインをして思うのだった。
同時出走のゴリさんはC2で2位! 地元レースでのいい走りはお見事。徳島市内に店舗を構えるシオカゼストアは、ブログがすでに有名と思いますがやっぱり読み応えがあって面白いのでぜひ。次回参戦の折は、お店にも寄らせてもらいます。そして火曜眉山!
色んな人たちと会い、競い、遊んだ阿波シクロクロス。道すがらに現れた道の駅や温泉に思いつくままぶらぶら寄り道をして、高松空港へ。東京行きの機上で、満ち足りた気持ちになっていたのだった。また来年も行きたいな。
Race photos by @3to5