東京湾シーバス、春の嵐

昨年末に乗り、船の楽しみ方を知った #talentforfishingratherthancycling の面々は、サイズアップと春の荒食いに期待して3月某日、再び東京湾上へと繰り出した。

この日のコンディションは雨。昼までは高止まりだった気温も、出船の折には冷たい風が吹き始める。これまで幾度となくタフコンディションをモノにしてきた熟達の @arakawa_monthly も心なしか表情が硬い。

“ザ・ビッグボス” @kmh.tffrtc は釣れても釣れなくても、この時間を楽しもうという気概が朗らかな語り口に現れる。しかし今シーズン、山上湖で幸先のよい一匹を叩き出しており、その一匹が巡り巡って湾上での心の余裕を生んでいるのかもしれない。淡水だろうが海水だろうが、一年の始まりを告げる会心の一尾はこの長い釣りシーズンにおいてずっとライトモチーフとなる。

変わらず饒舌なのはこの日を境に太平洋から日本海へと移動する @sowful 大都会での暮らしを終えるのに選んだのは高層ビルのてっぺんでも、広大に根を張る東京アンダーグラウンドではなく、爆風と驟雨にさらされた東京湾上であった。

今日はジギングの釣り。僕らのように人生でほとんどジギングに触れてこなかった者にとって、「ジギング感」とは遠洋で長くて太いスピニングタックルを用い、細かいピッチでしゃくりを連続させる肉体労働であるが、シーバスのジギングとはアクションはほとんどつけずにただ巻いて落とすだけのものであるらしい。

実際にやってみると、とめどなく溢れる「コレデイイノカ」感。だって落としてただスーっと巻いてくるだけ。能動的なルアーフィッシングの、ある意味で最たるものだと思われるジギングでスー。なんだか、心もとない。ロッドワークって、魚を呼ぶためというより、釣りをしてるんだと釣り人に自覚させるためにあるんだとさえ思えてくるね。

そしてこの日の激シブなコンディションが、さらに「コレデイイノカ」感を加速させる。経験の少なさからくる、確信のできなさがつらい。加えて、爆風にさらされた船の揺れもかなりつらい。うう……。

こんな状況で結果を出すのは、そう@arakawa_monthly。消沈しかけた船上をぱっと照らすファーストフィッシュ。やはりこの人は釣りがうまい。続いてビッグボスが追加。フォーリングでのアタリをモノにした一匹。そして僕にも順番が回ってきた……と思ったらカサゴだった。けれど嬉しい。

風も強さを増す一方。前回よりも冬の釣りが色濃いコンディションに耐えながらスー。スー。スー。立ってるのが辛い船の揺れにも負けずスー。スー。スー。ゆっくりめのフォーリングでなんとかバイトをとってようやく一匹キャッチ。もはや釣れるか釣れないかの瀬戸際だったので、この一尾が今日の一尾となった。

雨なのがわかっていたので、お気に入りのWestern Riseのジャケットを着込んできたのだ。

いよいよ風と波が暴力性を増してきたので、早めに帰還。最後の東京の思い出が船酔いになった@sowfulは、帰還時だけなぜか元気が増していた。僕はというと、船が波で跳ねるたびに手術したての傷に響き、それはよいリハビリとなりましたとさ……。ともあれ、無事に帰れて何より。こういう1日もまた、後で語る楽しさがあるってもんだよね。