ブエルタ・ア・サンファン2019 1-5st

アルゼンチンで開催される、シーズンオープニングを告げるレースのひとつ、ブエルタ・ア・サンファン。ブエノスアイレスの西およそ1000kmに位置するサンファン(San Juan)州が舞台のステージレース。2017年からUCI1クラスに昇格、ワールドツアーチームの参加もみられるようになった。


サンファンという土地、大会の歴史


アルゼンチン北西部サンファン州は西でチリと国境を接する。植物に乏しい山岳地域で、恐竜などの化石産出地としても名高い。ワインとオリーブオイルの産出量が多く、アンデス山脈近くの西部では人工の水路から水を引いた果実栽培も行われている。1980年に完成したウルム・ダムによって、ブドウ、オリーブ、イチジクなどの栽培が可能になった。

金の埋蔵も認められ、バリックゴールドコーポレーション社による採掘が行われている。2007年には世界最高標高地点に風車が設置された。ベラデロ鉱で、標高はおよそ4200m。

レースは1982年に始まり、2019年で37回目の開催を数える。10日のステージレースだったが、経済的理由で現在は7ステージ制に。2017年にUCI 2.1になり、アルゼンチン選手のレースから国際的なレースに。ガビリア、ボーネン、リケーゼでクイックステップがステージ5勝と平坦ステージを席巻し、アルト・デ・コロラドへ登る第6ステージではルイ・コスタ(UAE)が勝利、区間5位のバウケ・モレマ(トレックセガフレード)が総合リーダーに。ちなみにこのステージでモレマに次ぐ6位は当時アンドローニのエーガン・ベルナル。総合優勝はモレマ、総合2位にオスカル・セヴィリャ(メデリン・インデル)、総合9位の新人賞にベルナルが輝いた。

2018年大会は波乱。第1ステージをガビリアが例年通り制し、30人の小集団となった第2ステージはコスタリカのロマン・ビラロボスが優勝。第3ステージのITTはアイルランドチャンピオンのライン・ミューレンが圧勝。第4ステージはリケーゼ、そして、アルト・デ・コロラドへ登る第5ステージではゴンサロ・ナハル(シンディカド・エンプレアドス・プブリコス・オブサンファン)が優勝。総合リーダーに。第6ステージはイエール・ワライス(ロットソウダル)、最終第7ステージはジャコモ・ニッツォーロがリケーゼとホッジのアルゼンチンクイックステップコンビを抑えて優勝。総合優勝はナハルかと思われたが、5月になって1/21日の検査でドーピング陽性が発覚。ブエルタ・ア・サンファンの第1ステージだった。これによりすべてのリザルトを剥奪され、第5ステージで2位だったオスカル・セヴィーリャが繰り上げ総合優勝となった。ナハルは前年にここサンファンで開催されたナショナル選手権で勝利し、ナショナルチャンプジャージを着てのドーピング失格であった。CERAという、時代遅れのEPOの使用だった。

フィリッポ・ガンナ(UAE→2019はSKY)が2位、ロドルフォ・トレス(コロンビア、アンドローニ→2019はイルミネートに移籍)が3位。

ちなみに今大会はコロンビアのナショナルチャンピオンシップと日程が重なっているため、ベルナルの出場はなし。連覇のかかったITTでは3位。優勝はEFエデュケーションファーストのダニエル・マルチネス。昨年2位のリベンジ達成。


ブエルタ・ア・サンファン2019 第1〜第5ステージ


第1ステージ サン・ファン〜ポシト 159km 平坦ステージ

集団スプリントに。残り700mでマヌエル・ベレッティを勝たせたいアンドローニジョカトリ・シデルメクがチームで牽引を見せるものの、そののちに崩壊。ペテル・サガン、エリック・バシュカ、サム・ベネットのボーラハンスグローエの連携もうまく行かず。チームを移籍したフェルナンド・ガビリアが制した。2位にはサンファンで何度も上位フィニッシュを遂げているマッテオ・マルチェッリ(イタリア、カハルーラル・セグロスRGA)が入った。

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ステージ
1.フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
2.マッテオ・マルチェッリ(イタリア、カハルーラル・セグロスRGA)
3.サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)

総合リーダー
フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)


第2ステージ チンバス〜プンタ・ネグラ 160.2km 丘陵ステージ

4度の3級山岳を繰り返し、5度目にフィニッシュするレイアウト。アナコナがキンタナのために牽引する集団から、最後の登りで飛び出したジュリアン・アラフィリップを追って、キンタナ、ティシュ・ベノート(ロット・ソウダル)の3名が抜け出すが、下り基調で一人独走に入ったアラフィリップを止められず逃げ切り。タイム差なしのメイン集団はシモーネ・コンソンニ(イタリア、UAEチームエミレーツ)、サガンが3位に入った。登りで決したレースに見えるが、アラフィリップが速かったのは踏まされる下り区間。スプリンターでもヒルクライマーでもない、パンチ力のある選手に適したコースだった。中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)が区間10位と健闘。

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ステージ
1.ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
2.シモーネ・コンソンニ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
3.ペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)

総合リーダー
フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)


第3ステージ ポシト 12km 丘陵ステージ

片道6kmの往復コース。アラフィリップが2連勝。ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)が12秒差の2位。3位には注目のネオプロ、レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が同タイム。平地の走行力でアラフィリップが抜きん出ていることを証明。春のクラシックの注目選手になってきそうだ。クイックステップとUAEの2チームの平地でのチームとしての強さも際立つ。

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ステージ
1.ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
2.ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
3.レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)

総合リーダー
ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)


第4ステージ サンホセ・デ・ハチャル〜バジェ・フェルティル 185.8km 丘陵ステージ

登りを終えてゴールまでの下り基調。集団スプリント。ドゥクーニンク・クイックステップはアラフィリップ、リケーゼ、ホッジという連携。リケーゼとホッジの切り替えにもたついている間に、コンソンニ、ガヴィリアのUAEコンビが先頭に。サガンがさすがの嗅覚で瞬時にUAEにつくが、ガヴィリアのトップスピードには及ばず。ホッジはスプリントを始めるタイミングが合わず。コンソンニの好調ぶりも光るスプリントだった。

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ステージ
1.ガヴィリア
2.サガン
3.ホッジ

総合リーダー
ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)


第5ステージ アルト・デル・コロラド 169.5km 山岳ステージ

サンファン名物アルト・デル・コロラド山頂ににフィッシュするクイーンステージ。最後の1級山岳の登坂に入っている残り13kmからウィネル・アナコナ(コロンビア、モビスター)がアタック。これを追走したのが前年覇者のオスカル・セヴィリャ。セヴィリャを振り切ったアナコナは逃げていたメデリンの2名、パレデス(コロンビア)とモントーヤ(コロンビア)に合流。ゴールまで3人で逃げ切り、ゴール勝負までもを制してリーダージャージ獲得。メデリンはセヴィーリャを待たずに、区間優勝に懸けたが完全に力負け。ワールドツアーチームとの格の違いが露わになった。パレデスはこの時点で1分46秒差の総合32位。セヴィーリャ体制になりきれてないコロンビアチーム事情もある……か? メイン集団はチームの違うキンタナ兄弟が積極的な動きを見せアラフィリップを翻弄。登りでのキレに欠く総合リーダーは57秒遅れのメイン集団ゴールを選択。リーダージャージはアナコナへ。中根は3分30秒遅れの43位、総合成績を5分44秒遅れの38位へと上げた。アラフィリップのアシストを務めたエヴェネプールは総合9位。足を使いすぎたため、新人賞2位のジーノ・マーダー(スイス、ディメンションデータ)とは2秒差にまで詰められている。

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ステージ
1.ウィネル・アナコナ(コロンビア、モビスター)
2.パレデス(コロンビア、メデリン)
3.モントーヤ(コロンビア、メデリン)

総合成績
1.ウィネル・アナコナ(コロンビア、モビスター)
2.アラフィリップ
3.オスカル・セヴィリャ(スペイン、メデリン)


第6ステージ、第7ステージは僭越ながらわたくしYuftaがDAZNにて実況させていただきます。自分にとっても長いロードシーズンの始まり、楽しみです。第6ステージはヴィリクム・サーキットにゴールするスプリントステージ。放送は2月3日(日)、2月4日(月)の朝6:30から。南米なので日本では早い時間帯です…。ライドの準備をしながらでもご観戦ください。明日のゴール地点↓

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